
インスタント麺業界における茨城県は水戸市の雄、麺のスナオシが製造・販売するカレー南蛮うどん。そのチープなパッケージが我々を惹きつけてやまない。ディスカウントストアで70円という、駄菓子のような価格設定のカップ麺である。
そもそもカレー南蛮とは何か?この場合の「南蛮」は一般的に長ねぎを指すらしい。鴨と長ねぎを具とする「鴨南蛮そば」があって、それにカレーを合わせ、鴨肉を替え、麺をうどんにしたものが「カレー南蛮うどん」。早い話が長ねぎ入りカレーうどんである。

さて、まずはフタを開いた状態の次の写真を見て欲しい。真っ白な油揚げ麺の荒野に、粉末スープの袋がポツン。「ま…真っ白で何もない…」さながら精神と時の部屋である。世に数多あるカップ麺をもって、これよりシンプルな構成があろうか?いや、ない。

湯をかけて4分。丼面の端に浮かび上がってきたのは紙くず、もとい紙吹雪のごとき刻みねぎ。これが「南蛮」たる所以か。一見すると青ねぎのように見えるが、実は長ねぎかも知れない。刻みが細かすぎて定かでない。

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もちもち感のある麺は、さすが社名に「麺」を冠するだけあるクオリティ。時代が昭和ならこれは一般的、いやそれ以上に価値があろう。植物油脂を練り込みながらも硬めに練ってあるため、あたかもコシのあるうどんのように錯覚させる。

さらさらのスープはチープの一言。スパイスの香味より塩気が勝っていて「味気ない」という表現がピタリと適合する。いわゆるスープカレーから、コクと旨味だけを抜き去る芸当。ここが、麺のスナオシが低価格と満足度の狭間に見た着地点。危なげなき「味の不時着」である。
ひと通り長い麺をすすったあと、大量に浮いて残るこまごまと短い麺の欠片たち。穴あきスプーンでも持っていなければ、玉子スープの掻き玉よろしく啜り食べるよりない。なるほど、スープも残さず飲ませようという憎い演出である。

空腹を満たすためと思えばコスパは高い。タンパク質は12g程もある。しかし美味しさを軸に据えるとパフォーマンスは低い。要は捉え方の問題である。この商品が一体誰のための何であり、どこから来てどこへ行くのか。私は遠くから見るともなく見守りたい。


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