まずい。だがそれが正しい|桜井食品 ベジタリアンのみそらーめん

極彩色の丼に箸を刺す少年の
灰色に塗られた肌と
物憂げな微笑が
世に数多のベジタリアン達の
閑かな決意をあらわしているようだ

肉や魚や乳などの動物性原材料
中華麺に用いられるカンスイ
たん白加水分解物
これら一切を使用しないラーメン

抑え切れぬ好奇心のうねり
一体どんな味がして
何を訴えるのか
口にすれば感じられるのだろう

虚 無

ざらつくほど粉っぽいスープに漂う
色と香りを欠いた淡白な麺
“素朴”とも言い表せる味
慎み深さの根源は
旨味という“暴力”の徹底的排除

得も言われぬ寂寞
しかしウマイとマズイの二極では
容易に割り切れぬと察する直感
私もグルメブロガーの端くれ
ちっぽけな矜持をもって分析を試みる

視点1:主観で見る
このラーメン
自然を装ったフィクション
拭えぬ“つくりもの”感
例えるなら花瓶に刺さる美しき造花の束
介在する人為的な動機と秩序
それゆえの魅力も勿論ある
“つくりもの”とは
言わばイデアに対するエドス
いま味噌ラーメンのイデアとは
“肉喰らう者”の野蛮な妄想
そんな本質からあえて距離を取り
掲げられたもうひとつの正義
振り回される破壊の鉄球
それに対し
知ったことかという苛立ち
ただ物足りないだけ
動物性の旨味を欠くから
これほど味気ない仕上がりになるのだと

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視点2:俯瞰で観る
このラーメン
理屈じゃない何かに阻まれ
考え及ばなかった世界を融解している
例えるなら耳を塞いで鑑賞する映画
削ぎ落とされたメロディ
そのうえに創意工夫が為されている
味と嗜好の平面的な関係に
新たに“制限”の軸を足した新境地
すぐそこにあった
しかし認識できずにいた
さながら超次元との接触
それに対し
知れて良かったと思える感動
メーカーはよくやっている
動物性の旨味を欠いても
ここまでの味噌ラーメンが出来るのだと

オムニボア(雑食)の者
ヴィーガンにあこがれる者
ヴィーガンとならざるを得ぬ者

この商品を手に取る多様な消費者
当にフードダイバーシティ
各々がこの味をどう捉えるかは
絶対的に位置付け
相対的に揺らぐ
心身と嗜好のもとで完全に自由な
“おいしさの及第点”にこそ依存する

動植物を区別なく喰らい
血肉へ変える健康な身体を持ち
一辺倒ならぬ正常な精神状態の私にとって
このラーメンは美味しいものでない

しかしそれで良いのだと
口に合わなくとも正しいのだと
能動的に捉える機会をくれた出逢い
桜井食品および生産流通に関わる
すべての関係者に

ありがとう

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