ランチパックと言う勿れ|フジパン スナックサンド タマゴ

スーパーの特設コーナーに積み上げられた赤・青・黄色の個装の調理パン。タマゴフィリングを包んで四辺を綴じた、耳のない食パン生地のサンドイッチ。そう、おなじみヤマザキのランチパックだ。いや待て、よく見たらこれはヤマザキのランチパックではない。これはスナックサンド。フジパンのスナックサンドだ。ランチパックに似ているがランチパックではなく、スナックサンドだ。時に、このフジパンのスナックサンドとは一体何物だ?パクリ商品か?とりあえず気になるので、買ってから調べることにした。

フジパンのスナックサンドとヤマザキのランチパックはよく似た商品だ。商品自体の見た目だけじゃなくパッケージや具の展開までソックリだ。そんなスナックサンドの発売は1975年、ランチパックの発売は1984年だそうだ。なんとパクリ商品はランチパックの方だった。ゴリ押しタレントの剛力彩芽を起用した、ゴリ押し広告の宣伝戦略が功を奏し、少なくとも私にとってフワフワ四角のサンドイッチと言えばランチパァック!だった。さすがはヤマザキ恐るべしといった所だ。フジパンのスナックサンドのパッケージに書いてある「元祖」の2文字は、カネとコネで操作したスポットライトを浴び、一躍人気者となった後輩には決して着けることのできない、ささやかながらもキラリと光る黄金の髪飾りなのだ。

一度気持ちをリセットして、フジパンのスナックサンドを齧ってみた。忖度なし、同情なしの食レポだ。ちょっと酸味があって、くっきりと、しかし主張し過ぎないマヨネーズの味が分かりやすい。粗めに崩したタマゴの歯触りと、ソフトな甘さと塩気のバランスも良い。「タマゴサンド言うたら厚焼き玉子やろ」と言う、私が隠し持った大阪モン人格の主張はおいしく封殺された。またしっとりフワフワ、やわらかなパン生地の食感は、ストレス社会を生きる我々現代人が知らず知らず心に着せている鋼鉄の鎧を優しく脱がせるようだ。良いよ。おいしいよ。フジパンだって、スナックサンドだって頑張っているじゃないか。私は今後、タマゴフィリングを包んで四辺を綴じた、耳のない食パン生地のサンドイッチを食べたくなったら、その時はランチパァック!ではなくスナックサンドを買うよ。

大阪民国の連中が誇るパクリ(とウワサされる)ご当地グルメ「堂島ロール」のように、出だしはどうあれ戦略性をもってスターダムにのし上がり、そして凋落するケースだってあるのだから、そういう意味では一概にどちらが本物で、どちらが偽物だと決めつけることはできない。それが販売戦略、マーケティングというものであり、調理パン市場もやはり勝者敗者がたちまちに入れ替わる諸行無常、盛者必衰の渦中にあるのだ。天はスナックサンドの上にランチパックを造らず、スナックサンドの下にランチパックを造らず。


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