ウスターソースがミソ|菊水 名店の逸杯 さっぽろ 純連 みそ

菊水 名店の逸杯 さっぽろ 純連 みそ

<食前鑑賞>
出来上がった2人前の味噌ラーメンは、表面に張った油膜が何とも期待感を煽る見映え。淵を囲うように浮かぶ紅い層が何に由来するものかは、この時はまだ分からない。湖面に浮き出る黄色の麺が、飽食の時代を象徴するかのように、空腹の私を焚き付けるかのように、いかにも豊かな量がそのスープの下に潜んでいる事を主張している。
冷蔵庫にあったほうれん草とネギが丼面に色を添え、妻曰わく「溶けるから写真はお早めに」と最後に乗せられたバターが視覚的にも理屈抜きにも間違いのない美味を、まるで十分に手厚い医療保険に「えっそんな聞いたことも無い病気までも」といった不慮不測の事態まで想定して付与できる安心特約のように補償している。

<実食>
油膜により保温された高温のスープは期待通りの濃厚さ。舌の根から前頭葉までを引き込むような奥深く甘い味噌味。そして甘さのすぐ後を追って来る独特な酸味と香味。思春期の学校帰りに眺めたオレンジ色の夕焼け空を彷彿させるその甘酸っぱさは、原材料表記から“ウスターソース”によるものと推察され、これがどうやら丼面の淵にあった“紅い層”の正体らしい。
麺は味噌ラーメンに最適なツルツルモチモチで太めの中華麺。かんすいの香りがラーメン好きの“わくわく”を刺激し、歯を押し返すコシが“うきうき”を助長する。さらにその麺に絡まって運ばれる溶け出した後入れバターによって口の中で“コクと旨味のビッグ・バン”が起こり、意識が遠のきそうなほど強引な美味が成立している。麺110g×2人前とのことだが、意外にするすると食べ切れるボリューム感。重さのある太麺ゆえに箸を運ぶ回数が細麺のそれと比べて少ないためそう思われるのだろうが、腹は相応にしっかりと膨れる。
麺を食べ終えても後引く濃厚スープの、まるで扇情的かつまどろっこしい昭和のメロドラマにおいて不倫カップル役の壮年男女が醸し出す雰囲気のような甘ったるい誘惑に、ついつい丼を傾けてぐいぐいと飲み干してしまいそうになるが、ふと脳裏に“血圧”の2文字が浮かび思い留まれる程度の強烈な塩気も併せ持っている。

<総評>
独自の世界観が表現された味噌スープは好みの分かれる所だろう。ただその深みと旨みは多くのファンの心を掴むのに十分な魅力を持っている。味噌ラーメンが好きな方なら一度は食べてみて良い一品と思われる。

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